戦姫絶唱シンフォギア感想
ニコニコポイントの期限切れが迫っていたので、前から気になっていたシンフォギアを購入した。IIDX22 PENDUALが稼働して音ゲーを再開したせいか、特に歌で戦うというテーマのアニメを観たいと思っていて、劇中歌が有名なマクロスフロンティア1かシンフォギアで迷った結果シンフォギアになった。水樹奈々のハスキーボイス好きだし。
響が死んだような描写から入る(でも死んだと明言しない)というベタな描写から始まったり、コンサート開演前の翼と奏の会話がわざとらしくもって回ったセリフ回しだったりで、あまり期待してはいけないのかな……と思っていたけど、コンサートのシーンを見て全部吹き飛んだ。普通のアニメなら適当なキャラソンを流してもおかしくないところが、このまま主題歌にも使えるんじゃないかというレベルの曲と映像で、さすが水樹奈々とElements Gardenを起用するだけのことはあるなと感じた。
そしてその直後、奏がノイズと戦い始めてまた衝撃を受けた。変身するときに歌を歌うのは予想していたけど、まさか歌いながら戦うとはまったく思っていなかったし、単なるキャラソンとは断じて違う、普通のアニメなら一番の盛り上がりどころまで取っておくような、映像と合わせても遜色のない完成度のアップテンポで気持ちの良い曲を開始10分で使ってしまうという贅沢さにとても驚き、これは良い作品だと確信した。
実際のところ、音楽面の演出ではずっと想像を超え続けていた。結局1話では、この後に翼の歌と響のシンフォギア起動詠唱、Synchrogazerへのつなぎと贅沢に音楽を使っていた(アップテンポのOPテーマを初回のEDに持ってくる演出はよくあるものとはいえ)。そして、響の歌はSynchrogazerか奏と同じ歌(ガングニールの力を受け継いでいるのはほぼ明らかなので)かと思いきや、続く第2話ではまったくの新曲がまた出てくる。戦闘シーンでは毎回歌が入るため、普通の1クールアニメでは全体通して1,2回程度しかないような盛り上がりが毎回発生する。しかも、ずっとボーカル入りでBGMとして流れているわけでもなく、ちゃんと本当に歌いながら戦っているという演出で、ちゃんと歌に合わせて口が動いているし、途中途中で歌が途切れたり、キャラクターの動きに合わせて歌い方が変わったりする。5話で響がコケるところは本当にすごかった。
ストーリーの面では、音楽面ほど洗練されてはおらず、 良く言えば分かりやすい一本道の筋書きで、悪く言えばありきたりという印象を受けた。また、展開が唐突だったり、設定と突き合わせて考えると登場人物の動きが不自然に思えたりする点がいくつもあった。特に絶唱なんかは、 最初に奏が絶唱で死んでからずっと、死と引き換えに一撃を食らわせる技という描写になっていて、実際最終話までみんなそう思って動いていたように見えるのだが、絶唱を使って死んだと思わせていた翼とクリスが響の歌声で復活したり、落ちてきた月を迎撃したあとも無事だったりして、いまひとつ一貫性がない。公式サイトの設定集ですら普通の適合者は絶唱しても大丈夫と書いてあって、3話や11話の悲壮感はいったいなんだったんだと思った。他にも、櫻井女史が黒幕であることを5話からずっとあからさまに匂わせていて、あからさますぎて逆にブラフじゃないかと思っていたら本当に黒幕だったり(これはむしろ成功かもしれない?)、喧嘩したり敵視していたりする相手を許すまでの掘り下げが足りず、突然和解してしまうように見えるなども不自然に感じた。
あと、これは欠点というわけではないけど、他作品のオマージュ(に見えるけど、ただ単に重なりやすい設定なだけかもしれない。響のセリフ回しがまどかに似ているとか、ガングニールのアームドギアがベルカ式デバイスのように見えるとか、クリスの思想がソレスタルビーイングっぽいとか)やメタ視点のギャグなどが結構盛り込まれていて、真面目に正座して観るのではなく、ニコニコ等でワイワイしながら観るのがちょうどいいなと感じた(実際、ずっとニコニコでコメント付きで観ていたが、歯がゆいところでツッコミが入るので気持ちが良かった)。
しかし、音楽を効果的に使ったバトルシーンと心理描写は、ストーリー面の粗さを補って余りあるだけの完成度を誇っている。水樹奈々と高垣彩陽の深みのある歌声と、悠木碧の明るく元気いっぱいな歌声が曲とよく合っていてとても盛り上がる。キャラクターソングが単なるイメージソングに留まらず、本編と深く強く結びついており、歌を聞くために何度も繰り返し作品を観たくなり、繰り返し観ることでどんどん作品の世界に引きこまれていく、そういう力のあるアニメだと感じた。
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後で知ったけど、マクロスフロンティアは別に歌で戦うアニメじゃないらしい。完全に勘違いしていた。 ↩